人力飛行機探訪記

鳥人間はじめ人力飛行機を見てきた記録をアーカイブ

棄権と翌年の出場の関連性を考察

 

調査目的

鳥人間コンテストに出場するチームに安全上の問題が生じ棄権を検討する場合、ルールや翌年以降の出場を懸念する声がある。*1

そのため棄権した場合と墜落した場合、どちらのほうが翌年の出場確立は高いのかを確認する。

 

調査対象

第31回~第41回大会まで

大会結果は鳥人間コンテストのウェブサイト上にある「大会の歴史」ページを主に参照する。第31回大会にて失格になったもしくは棄権したチームは大会の歴史ページに掲載されていないため、鳥典*2を参照する。

 

調査手順

1.第31回~第40回において棄権・失格・墜落したチームを大会の歴史や鳥典から探す。

2.翌年の同大会に出場しているかを調査する。

3.何割のチームが翌年出場しているかを計算する。さらに社会人チームは一年間で一機体を作ることが困難な場合、もしくは一度出場したのちに結果はどうあれ解散する場合があるため、学校に所属するチームのみ抜き出した場合の計算も行う。

 

棄権・失格・墜落の定義

棄権・失格は大会記録がそれぞれ棄権もしくは失格となっているものとする。

また、墜落とする基準は距離を競う部門は50m以下の記録とする。飛距離の分布から判断を行いこのように定義した。

 

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第40回大会の滑空機部門における飛距離のグラフ

 

記録上で測定不能となっている場合は墜落として扱う。

 

タイムトライアル部門は大会記録上、旋回ポイントまでたどり着かない飛行は全て「記録なし」となっているため墜落の代わりに記録なしの場合を調査した。

 

データ

大会の歴史と鳥典から以下のデータを抜き出した。

滑空機部門オープンクラスについては滑空機部門として掲載する。

棄権

滑空機部門
大会 チーム名 翌年の出場
31 電気通信大学「電鳥」 ×
31 桜井市余暇を楽しむ連中の会 ×
33 Team Ocean Man ×
34 IMB プロジェクト ×
35 大駅土・江南 ×
滑空機部門フォーミュラクラス
大会 チーム名 翌年の出場
32 de'coller ×
人力プロペラ機部門・人力プロペラ機ディスタンス部門
大会 チーム名 翌年の出場
32 滋賀県立大学 白井 宏明
34 Team 飛行時間 ×
37 横浜国立大学 横浜AEROSPACE ×
37 日本大学理工学部航空研究会
37 芝浦工大 Team Birdman Trial
38 山形大学 Craft-Pal ×
38 次世代航空機研究会

人力プロペラ機タイムトライアル部門 
大会 チーム名 翌年の出場 備考
37 東京大学 F-tec × この年に活動休止*3
38 早稲田大学宇宙航空研究会 WASA  

 

失格

調査範囲の期間においてはディスタンス部門で失格となった結果は見当たらなかった

滑空機部門(オープンクラス含む)
大会 チーム名 翌年の出場
31 チーム ランホリンクス ×
32 津田沼航空研究会
34 津田沼航空研究会
34 羽ばたき飛行できる会 ×
38 三重大学 Pa-tan!!! ×
40 創価大学鳥人間研究会 ×
滑空機部門フォーミュラクラス
大会 チーム名 翌年の出場
32 チーム・M.A ×
人力プロペラ機タイムトライアル部門
大会 チーム名 翌年の出場 備考
33 東京大学 F-tec  
36 早稲田大学宇宙航空研究会 WASA × 翌年は活動停止*4

 

墜落

滑空機部門
大会 記録 チーム名 翌年の出場 備考
31 35.72 日本文理大学Wind Pilots ×  
32 48.5 東京理科大学鳥人間サークル‐鳥科 ×  
32 35.05 FLYING FISH  
32 15.5 信州大学ACMクラブ ×  
32 測定不能 湘南工科大学 「鳥人会」 ×  
33 35 大阪大学 albatross × 翌年はプロペラ機への移行期間のため応募なし
33 32.64 Team ЯTR ×  
33 31.9 滋賀県立大学 COOL SWEETS ×  
33 31.57 東京理科大学鳥人間サークル-鳥科  
33 22.97 法政大学航空工学研究会 HoPE  
33 20.07 金沢大学鳥人間コンテスト同好会  
33 19.14 鳥人計画研究所 ×  
  測定不能 次世代航空機研究会 ×  
34 42.97 法政大学航空工学研究会 HoPE  
34 39.73 静岡理工科大学+宇宙少年団磐田 ×  
34 30.94 新居浜高専 チームマイグラント ×  
34 27.8 京都線 ×  
34 27.18 九州大学鳥人間チーム  
34 26.5 湘南工科大学 鳥人  
34 20.65 626Lab ×  
35 40.44 チーム吉本百周年 ×  
35 39.91 チーム てぷと ×  
35 32.72 Pa-Tan!  
35 31.49 苅田工業高校「苅工 Dream」  
35 23.46 法政大学航空工学研究会HoPE ×  
35 19.97 湘南工科大学 鳥人 ×  
35 13.97 金沢大学鳥人間コンテスト同好会  
35 13.94 東京女子大学 飛ん女の会  
36 29.86 三重大学 鳥人間サークル Pa-tan!! ×  
36 21.97 木工の街 大川 ×  
36 19.34 豊田工業大学 翼人会SOLAE ×  
36 17.7 新居浜高専 Team Migrant  
36 17.41 金沢大学鳥人間コンテスト同好会 ×  
36 13.75 苅田工業高校 「苅工 DreamⅡ」 ×  
36 13.47 次世代航空機研究会 ×  
37 35.58 上智大学 Flying Turkeys  
37 27.26 都立産技高専 TeamЯTR ×  
37 23.72 福井工業大学鳥人間プロジェクト ×  
37 17.9 新居浜高専 Team Migrant ×  
38 38.46 おとっつぁんバードマン仲間 ×  
38 24.79 金沢大学 空猿 ×  
38 21.06 東京理科大学鳥人間サークル-鳥科  
38 15.05 岩手大学 decoller ×  
38 14.62 兵庫県立大学 wishbirds ×  
38 13.25 ねりまチャレンジチーム ×  
39 40.44 室蘭工業大学航空研究会 ×  
39 30.93 上智大学 Flying Turkeys ×  
39 16.27 Iwatani クリーンエネルギーチーム  
39 14.78 苅工 Dream ×  
39 13.14 法政大学航空研究会 HoPE  
40 31.33 626Lab × 翌年はalbatrossに弟子入り*5
40 29.12 法政大学航空工学研究会HoPE ×  
40 24.65 兵庫県立大学 wishbirds ×  
40 24.12 新居浜高専 Team Migrant ×  
40 23.75 チームあざみ野 × 応募なし*6
40 22.08 広島工業大学 HIT Sky Project ×  
40 21.63 神奈川工科大学 SWIFT ×  
40 18.18 福井工業大学 鳥人間プロジェクト ×  
40 16.23 羽ばたいて飛びたい親父達の会  
40 14.85 ねりまチャレンジチーム ×  
40 11.57 滋賀県立大学 航空研究会UAfg  
40 9.36 静岡理工科大学 Sky Traveler  
滑空機部門フォーミュラクラス
大会 記録 チーム名 翌年の出場
31 43.82 チーム てぷと ×
31 37.37 大阪大学albatross ×
31 34.68 新居浜高専 Team Migrant ×
31 34.56 創価大学鳥人間研究会
32 21.62 TES鳥人間チャレンジ ×
32 14.49 茨城大学航空技術研究会 ×

人力プロペラ機部門・人力プロペラ機ディスタンス部門
大会 記録 チーム名 翌年の出場
31 35.68 東京大学飛行理論実践委員会F-tec ×
31 31.04 北海道大学鳥人間研究会 ×
31 25.51 有人飛翔体研究会 ×
31 22.18 東洋大学人力飛行機を飛ばす会 ×
31 17.37 九州工業大学 KITCUTS
32 29.53 静岡大学ヒコーキ部
33 42.44 WIND PILOTS ×
33 33.28 工学院大学 B.P.Wendy ×
33 24.54 立命館大学飛行機研究会 ×
33 15.09 静岡大学 ヒコーキ部 ×
34 42.16 東京理科大学 ACM ×
34 30.46 山形大学 Craft-Pal ×
35 44.95 北海道大学 Northern Wings ×
35 37.19 大阪大学albatross
36 41.72 東北大学 Windnauts
36 34.17 豊田人力飛行機研究会
39 24.27 芝浦工大 Team Birdman Trial
39 14.45 立命館大学飛行機研究会 RAPT ×
40 41.1 工学院大学鳥人間プロジェクトB.P.Wendy ×

 

記録なし

全てタイムトライアル部門

大会 チーム名 翌年の出場 備考
31 首都大学東京 鳥人間部 T-MIT ×  
31 崇城大学 エアロスペース ×  
31 広島大学工学研究科 KAEDE  
31 東京理科大学Aircraft Makers ×  
31 東海大学チャレンジセンター ×  
31 名古屋大学AirCraft ×  
31 ドボン会 ×  
31 つくば鳥人間の会  
32 首都大学東京鳥人間部 T-MIT  
32 龍谷大学 RYU-JU ×  
32 東京電機大学 Flight Works ×  
32 早稲田大学宇宙航空研究会 ☆サポーター賞
32 広島大学工学研究科 KAEDE  
32 名古屋大学 AirCraft ×  
33 首都大学東京 鳥人間部 T-MIT  
33 北海道大学 鳥人間研究会 ×  
33 早稲田大学宇宙航空研究会  
33 広島大学工学研究科 KAEDE ×  
33 大阪府立大学 堺・風車の会  
33 東海大学 L.P.P ×  
34 大阪府立大学 堺・風車の会  
34 創価大学鳥人間研究会  
34 早稲田大学宇宙航空研究会 ×  
35 創価大学鳥人間研究会  
35 愛知工業大学人力飛行機同好会 ×  
35 筑波大学 つくば鳥人間の会  
36 首都大学東京 鳥人間部 T-MIT  
36 東京大学 F-tec  
36 筑波大学 つくば鳥人間の会 ×  
36 創価大学鳥人間研究会  
37 大阪府立大学 堺・風車の会  
37 東海大学人力飛行機チーム  
38 愛知工業大学 一陣乃風 ×  
38 東海大学 TUMPA ×  
38 首都大学東京 鳥人間部 T-MIT  
39 MPACIIwith滝っ子  
39 早稲田大学宇宙航空研究会 WASA  
39 大阪府立大学 堺・風車の会  

 

フライトなし

第37回大会で台風によりフライトが不可能となったチームは以下の通り。

同大会で棄権したチームとは記録上区別されている。

大会 記録 チーム名 翌年の出場
37 フライトなし 京都大学 ShootingStars ×
37 フライトなし 名古屋工業大学with OBスターズ
37 フライトなし 東京工業大学 Meister

 

部門総合

以上を集計して第31~40回大会の出場チーム数について表を製作した。

  総出場チーム数 棄権 失格 フライトなし 記録なし 墜落 離陸成功
DST 123 7 0 3 0 19 94
滑空 202 6 7 0 0 68 121
TT 67 2 2 0 38 0 25

 

翌年の出場率の計算結果

計算式は次のものを利用する。

翌年の出場率=条件に当てはまりかつ翌年出場しているチーム数/(条件に当てはまるチーム数ー翌年応募書類を提出していないチーム数)

 

例えば棄権した場合の翌年の出場率を計算する場合、式は以下となる。

出場率=棄権したが翌年出場しているチーム数/(棄権したチーム数ー翌年応募書類を提出していないチーム数)

 

出場翌年に応募書類を提出していないと思われるパターンは次に挙げる。

・第33回大会のalbatross

・第35回大会のチーム吉本百周年

・第36回大会のWASA

・第37回大会のF-tec

・第40回大会の626Lab、チームあざみ野

 

滑空機部門

滑空機部門のみの場合、翌年の出場率は以下のようになった。

  全てのチーム 学校所属チーム
棄権 0.00% 0.00%
失格 33.33% 50.00%
墜落 32.20% 36.36%

 

第32回大会まで存在した部門であるフォーミュラクラスは件数が少ないため、滑空機部門としてまとめて計算を行った。その場合は以下のようになった。

  全てのチーム 学校所属チーム
棄権 0.00% 0.00%
失格 28.57% 50.00%
墜落 30.77% 34.00%

 

滑空機部門において棄権・失格についてはそれぞれ6件・7件であった。そのうち学校所属のチームは2件・4件である。

 

プロペラ機部門・プロペラ機ディスタンス部門

  全てのチーム 学校所属チーム
棄権 57.14% 50%
失格 なし なし
墜落 31.58% 29.41%
フライトなし 66.67% 66.67%

 

距離を競う部門の総合

滑空機部門(フォーミュラクラス含む)、人力プロペラ機部門、人力プロペラ機ディスタンス部門のデータを合わせて計算した。

  全てのチーム 学校所属チーム
棄権 30.77% 37.50%
失格 33.33% 50.00%
墜落 32.05% 33.33%

 

タイムトライアル部門

  全てのチーム 学校所属チーム
棄権 100% 100%
失格 100% 100%
記録なし 55.26% 55.56%

棄権・失格は共に2件、そしていずれもうち1件は翌年応募がないと確認できるため翌年の出場率が100%という結果であった。

 

考察

飛距離を競う部門において棄権と墜落の場合を比較した際、翌年の出場率の差は数%である。よって万が一棄権を検討しなければならない状況となった際に翌年以降の出場を懸念する必要はないと結論付ける。

また調査方法の項で述べた通り、全てのチームが必ずしも大会出場した翌年に応募書類を送っているわけではない。そのため棄権・失格・墜落した尚且つ翌年に応募書類を提出したチームの出場率は全体的にこの結果よりやや高くなると考えられる。

 

あとがき

これをほぼ書き終えてから大会の歴史の滑空機部門は上位のチームしか掲載されていない年度があることを思い出した。修正に時間がかかった。

 

あとこれは、計算結果の項のボツ画像です。

図のセンスを磨きたい。

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追記

情報提供をいただきました。ありがとうございます。